○医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の施行について
(平成九年三月二七日)
(薬発第四三〇号)
(各都道府県知事あて厚生省薬務局長)
医薬品の製造(輸入)承認申請の際に提出すべき資料の収集のために行われる臨床試験(治験)につい ては、従来より、治験を依頼しようとする者が依頼に際し遵守しなければならない基準(旧規則第六七条)及び平成元年一〇月二日薬発第八七四号薬務局長通知 「医薬品の臨床試験の実施に関する基準について」により臨床試験が倫理的な配慮のもとに科学的に適正に実施されるための基準(以下「旧GCP」という。) を示してきたところである。また、平成五年六月二八日薬発第五七二号薬務局長通知「医薬品の市販後調査の実施に関する基準について」により、市販後に行わ れる臨床試験についても、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」に準じて実施することを指導しているところである。今般、中央薬事審議会答申(平成九年 三月一三日中薬審第四〇号)の内容を踏まえた医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年厚生省令第二八号)が平成九年四月一日から施行され、今 後は治験及び市販後臨床試験について同省令の基準(以下「新GCP」という。)が適用されることとなったので、左記の事項に御留意の上、貴管下関係者に対 し、指導方御配慮煩わしたい。
なお、この通知において、「薬事法等の一部を改正する法律」(平成八年法律第一〇四号)による改正後の薬事法(昭和三五年法律第一三五号)を「法」と略称する。
T 新GCPの適用対象及び適用時期について
一 新GCPの適用対象について
(一) 承認審査資料の基準(第三条)
第三条に定められた規定は、法第一四条第三項後段に規定する「厚生大臣の定める基準」として、法第 一四条(第二三条において準用する場合を含む。)又は第一九条の二の規定により医薬品の製造(輸入)承認の申請を行う者が法第一四条第三項の規定により添 付する臨床試験の試験成績に関する資料について適用されること。
この基準が適用される資料は、平成九年三月二七日厚生省令第二九号により改正された後の薬事法施行規則(以下「規則」という。)第一八条の四の二に定められた医薬品(いわゆる新有効成分含有医薬品、新投与経路医薬品及びその他の医療用医薬品)に係るものであること。
(二) 再審査・再評価資料の基準(第五六条)
第五六条に定められた規定は、法第一四条の四第四項後段及び第一四条の五第四項に規定する「厚生大 臣の定める基準」として、法第一四条の四の規定により再審査の申請を行う者が同条第四項の規定により添付する資料及び第一四条の五の規定により再評価を受 けるべき者が同条第三項の規定により提出すべき資料のうち市販後臨床試験に係るものについて適用されること。
これらの基準が適用される資料は、規則第二一条の三の二及び第二一条の五に定められた医薬品に係るものであること。
なお、医療用医薬品において、市販後臨床試験に関する再審査・再評価のための資料の基準として、本 基準の規定によるほか、医薬品の市販後調査の基準に関する省令(平成九年厚生省令第一〇号)の基準が適用されることに留意すること。また、平成九年三月二 七日薬発第四三九号薬務局長通知「医療用医薬品の市販後調査の基準に関する省令の施行について」を参照すること。
(三) 治験の依頼等の基準(第五七条、第五八条、第五九条)
第五七条、第五八条及び第五九条に定められた規定は、それぞれ法第八〇条の二第一項、第四項及び第五項に規定する「厚生省令で定める基準」として、治験の依頼をしようとする者、治験の依頼を受けた者及び治験の依頼をした者にそれぞれ適用されること。
二 新GCPの適用時期について
(一) 承認審査資料の基準(第三条、附則第二条)
本基準は平成九年四月一日以降に行われた申請に係る資料から適用すること。ただし、適用時期について次に掲げる経過措置を定めたこと。
ア 平成九年三月三一日までに収集され、又は作成された資料及び平成九年四月一日に現に収集され、又 は作成されている資料については、次のT)からY)に掲げる規定及び旧規則第六七条各号の規定を適用すること(附則第二条第一項)。この場合において、 「現に収集され」ている資料とは、既に依頼(契約)が行われた治験及び依頼はされていないが既に第七条第一項(第二号から第四号まで及び第九号から第一三 号までを除く。)の規定に適合する治験実施計画書が作成されていた治験に係る資料を含むものであること。
T) 治験審査委員会の意見聴取に係る規定(第三〇条第一項)
U) 実施医療機関の要件に係る規定(第三五条)
V) 被験者となるべき者の選定に係る規定(第四四条)
W) 症例報告書の作成に係る規定(第四七条第一項)
X) 説明と同意に係る規定(適切な説明・同意)(第五〇条第一項の読み替え)
Y) 代諾者に係る規定(第五〇条第二項)
イ 平成九年六月三〇日までに依頼が行われた治験又は同日までに法第八〇条の二第二項の規定により計 画が届け出られた治験に係る資料(アの資料を除く。)については、第四条から第五五条までの規定のうち、次のT)からX)に掲げる規定は適用しないこと (附則第二条第二項)。
T) モニタリング、監査に係る規定(直接閲覧に係る規定を含む。)(第七条第一項第九号、第二一条、第二二条、第二三条、第三七条、第五一条第一項第一〇号)
U) 契約書に記載すべき事項に係る規定(第一三条第九号から第一三号まで及び第一五号)
V) 治験薬の管理のための手順書に係る規定(第一六条第六項、第三九条)
W) 治験審査委員会に係る規定(第二八条第一項)
X) 実施医療機関の治験の業務に関する手順書に係る規定(第三六条)
ウ 平成一〇年三月三一日までに依頼が行われた治験又は同日までに法第八〇条の二第二項の規定により 計画が届け出られた治験に係る資料(ア及びイの資料を除く。)については、第四条から第五五条までの規定のうち、次のT)からW)に掲げる規定は適用しな いこと(附則第二条第三項)。
T) モニタリング、監査に係る規定(直接閲覧に係る規定を含む。)(第七条第一項第九号、第二一条、第二二条、第二三条、第三七条、第五一条第一項第一〇号)
U) 契約書に記載すべき事項に係る規定(第一三条第一二号及び第一五号)
V) 治験審査委員会に係る規定(第二八条第一項)
W) 実施医療機関の治験の業務に関する手順書に係る規定(第三六条)
(二) 再審査・再評価資料の基準(第五六条、附則第三条)
本基準は平成九年四月一日から適用すること。ただし、適用時期について次に掲げる経過措置を定めたこと。
ア 薬事法等の一部を改正する法律(平成八年法律第一〇四号)の施行(平成九年四月一日)前に収集さ れ、又は作成された資料及びこの省令の施行の際現に収集され、又は作成されている資料については、同法附則第二条第二項及び第三項に定めるところにより、 この省令の基準は適用されないこと。なお、本基準の規定が適用されない資料についても次のT)からY)に掲げる規定及び旧規則第六七条各号の規定について は、これらの規定に準じて試験が実施されているかどうかについて、従前の例により調査、確認を行うこととすること。
T) 市販後臨床試験審査委員会の意見聴取に係る規定(第三〇条第一項)
U) 実施医療機関の要件に係る規定(第三五条)
V) 被験者となるべき者の選定に係る規定(第四四条)
W) 症例報告書の作成に係る規定(第四七条第一項)
X) 説明と同意に係る規定(適切な説明・同意)(第五〇条第一項の読み替え)
Y) 代諾者に係る規定(第五〇条第二項)
イ 平成九年六月三〇日までに依頼が行われた市販後臨床試験に係る資料(アの資料を除く。)について は、第五六条において準用する規定のうち、第七条第一項第九号、第一三条第九号から第一三号まで及び第一五号、第一六条第六項、第二一条から第二三条ま で、第二八条第一項、第三六条、第三七条、第三九条並びに第五一条第一項第一〇号の規定を適用しないこと。
ウ 平成一〇年三月三一日までに依頼が行われた市販後臨床試験に係る資料(ア及びイの資料を除く。) については第五六条において準用する規定のうち、第七条第一項第九号、第一三条第一二号及び第一五号、第二一条から第二三条まで、第二八条第一項、第三六 条、第三七条並びに第五一条第一項第一〇号の規定を適用しないこと。
(三) 治験の依頼の基準(第五七条、附則第四条)
ア 平成九年三月三一日までに第七条第一項(第二号から第四号まで及び第九号から第一三号までを除く。)の規定に適合する治験実施計画書が作成されていた治験を依頼しようとする者については、旧規則第六七条第一号から第六号までの規定を適用すること(附則第四条第一項)。
イ 平成九年四月一日から平成九年六月三〇日までの間に法第八〇条の二第二項の規定により計画が届け 出られた治験(アの治験を除く。)を依頼しようとする者については、第五七条において準用する規定のうち、第一三条第九号、第一〇号及び第一二号の規定を 適用しないこと(附則第四条第二項)。
ウ 平成九年七月一日から平成一〇年三月三一日までの間に法第八〇条の二第二項の規定により計画が届け出られた治験(アの治験を除く。)を依頼しようとする者については、第五七条において準用する規定のうち、第一三条第一二号の規定を適用しないこと(附則第四条第三項)。
(四) 治験を行う基準(第五八条、附則第五条)
ア 平成九年三月三一日までに治験の依頼を受けた者については、この省令の基準は適用されないこと。(薬事法等の一部を改正する法律(平成八年法律第一〇四号)附則第二条第五項)
イ 平成九年四月一日以降に依頼が行われた治験のうち、平成九年三月三一日までに第七条第一項(第二 号から第四号まで及び第九号から第一三号までを除く。)の規定に適合する治験実施計画書が作成された治験の依頼を受けた者については、第五八条において準 用する第二七条から第五五条までの規定のうち、次のT)からY)に掲げる規定を準用すること(附則第五条第一項)。
T) 治験審査委員会の意見聴取に係る規定(第三〇条第一項)
U) 実施医療機関の要件に係る規定(第三五条)
V) 被験者となるべき者の選定に係る規定(第四四条)
W) 症例報告書の作成に係る規定(第四七条第一項)
X) 説明と同意に係る規定(適切な説明・文書による同意)(第五〇条第一項の読み替え)
Y) 代諾者に係る規定(第五〇条第二項)
ウ 平成九年四月一日から平成九年六月三〇日までに依頼が行われた治験又は法第八〇条の二第二項の規 定により計画が届け出られた治験(イの治験を除く。)の依頼を受けた者については、第五八条において準用する第二七条から第五五条までの規定のうち、次の T)からW)に掲げる規定を適用しないこと(附則第五条第二項)。
T) モニタリング、監査に係る規定(直接閲覧に係る規定を含む)(第三七条、第五一条第一項第一〇号)
U) 治験薬の管理のための手順書に係る規定(第三九条)
V) 治験審査委員会に係る規定(第二八条第一項)
W) 実施医療機関の治験の業務に関する手順書に係る規定(第三六条)
エ 平成九年七月一日から平成一〇年三月三一日までに依頼が行われた治験(イ及びウの治験を除く。)の依頼を受けた者については、第五八条において準用する第二七条から第五五条までの規定のうち、次のT)からV)に掲げる規定を適用しないこと(附則第五条第三項)。
T) モニタリング、監査に係る規定(直接閲覧に係る規定を含む)(第三七条、第五一条第一項第一〇号)
U) 治験審査委員会に係る規定(第二八条第一項)
V) 実施医療機関の治験の業務に関する手順書に係る規定(第三六条)
(五) 治験の管理の基準(第五九条、附則第六条)
ア 平成九年三月三一日までに治験の依頼をした者については、この省令の基準は適用されないこと(薬事法等の一部を改正する法律(平成八年法律第一〇四号)附則第二条第五項)。
イ 平成九年四月一日以降に依頼が行われた治験のうち、平成九年三月三一日までに第七条第一項(第二 号から第四号まで及び第九号から第一三号までを除く。)の規定に適合する治験実施計画書が作成された治験の依頼をした者については、旧規則第六七条第七 号、第八号及び第一〇号の規定を適用すること(附則第六条第一項)。
ウ 平成九年四月一日から平成九年六月三〇日までに依頼が行われた治験又は法第八〇条の二第二項の規 定により計画が届け出られた治験(イの治験を除く。)の依頼をした者については、第五九条において準用する規定のうち次のT)及びU)に掲げる規定を適用 しないこと(附則第六条第二項)。
T) モニタリングに係る規定(第二一条第一項)
U) 治験薬の管理のための手順書に係る規定(第一六条第六項)
エ 平成九年七月一日から平成一〇年三月三一日までに依頼が行われた治験(イ及びウの治験を除く。)の依頼をした者については、第五九条において準用する規定のうち、第二一条第一項のモニタリングに係る規定を適用しないこと(附則第六条第三項)。
(六) (一)から(五)のとおり適用時期について経過措置を定めたところであるが、適用されない規定についても可能なものから順次取り入れ実施するよう努められたいこと。
U 新GCPの内容について
一 総則(第一章)
(一) 第一条関係
新GCPは、次に掲げる基準を示したものであること。
一) 法に基づく医薬品の製造(輸入)承認を受けようとする者が承認申請書に添付する医薬品の臨床試験の成績に係る資料の収集及び作成の際に従うべき基準
二) 治験の依頼をしようとする者、治験の依頼を受けた者及び治験の依頼をした者が治験を倫理的及び科学的に適正に実施するために従うべき基準
三) 医薬品の製造(輸入)承認を受けた者が臨床試験に係る再審査及び再評価の資料の収集及び作成の際に従うべき基準
(二) 第二条関係
ア 第三号の「治験責任医師」とは、実施医療機関において治験の実施に関して責任を有する医師又は歯科医師であること。実施医療機関において治験が複数の者からなるチームにより実施される場合には、当該チームを統括する医師又は歯科医師であること。
イ 第六号の「対照薬」とは、既承認有効成分若しくは未承認有効成分を含む製剤又はプラセボを意味すること。
ウ 第一〇号の「原資料」とは、被験者に係る診療録、検査ノート、治験薬等の投与記録等の治験の事実経過の再現と評価に必要な記録を指すこと。
エ 第一八号の「有害事象」とは、治験薬又は市販後臨床試験薬を投与された被験者に生じたすべての疾病又はその徴候(臨床検査値の異常を含む。)をいい、当該治験薬又は当該市販後臨床試験薬との因果関係の有無は問わないものであること。
オ 第一九号の「代諾者」とは、治験への参加について、被験者に十分な同意の能力がない場合に、被験 者とともに、又は被験者に代わって同意をすることが正当なものと認められる者であり、被験者の親権を行う者、配偶者、後見人その他これに準じる者で両者の 生活の実質や精神的共同関係から見て、被験者の最善の利益を図りうる者を意味すること。
二 承認審査資料の基準(第二章から第四章まで)
第二章 治験の依頼に関する基準
(三) 第四条関係
ア 第一項の「手順書」とは、治験に係る業務が恒常的に適正に実施されるよう標準的な手順を定めた文書であること。なお、第二一条第一項、第二三条第一項、第二八条第二項、第三六条第一項等における「手順書」も同じ意味であること。
イ 第二項の「治験の依頼及び管理に係る業務を行うことにつき必要な専門的知識を有する者」とは、治 験に関する医学的な問題について適切な助言を行う医学の専門家、並びに治験実施計画書、治験薬概要書等の作成・改訂、データの取扱い、統計解析の実施、統 括報告書の作成等、治験の全過程を通じて活用されるべき治験依頼者内部及び外部の専門家(例:生物統計学者、臨床薬理学者等)を含むものであること。
(四) 第五条関係
「被験薬の品質、毒性、薬理作用に関する試験その他治験の依頼をするために必要な試験」とは、当該 被験薬の物理的、化学的性質、性状等に関する理化学試験等、毒性、薬理作用、吸収、排泄等に関する動物試験等のいわゆる非臨床試験や臨床試験を指している が、当該試験の具体的な項目、内容等については、当該治験の内容(治験のフェーズ、治験薬の投与経路及び投与期間、被験者の選択基準等)等を考慮のうえ、 治験の依頼時点における科学的水準に照らし適正なものであること。
(五) 第七条関係
ア 旧GCPにおいて治験総括医師が作成するものとされていた治験実施計画書は、新GCPにおいて は、治験の依頼をしようとする者が、第五条に掲げる必要な試験の結果等に基づき作成するが、この際、治験依頼者は、治験薬概要書等の治験実施計画書の内容 を検討するために必要な資料を、あらかじめ治験責任医師となるべき者に提供しなければならないこと。治験実施計画書を作成するときは、治験の依頼をしよう とする者は、第四項の規定に従って、治験実施計画書の内容及びこれに従って治験を行うことについて治験責任医師となるべき者の同意を得なければならないこ と。また、同意を得たことを証するため、治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者は、治験実施計画書又はそれに代わる文書に記名なつ印 し、又は署名すること。
イ 第二項の「当該治験が被験者に対して治験薬の効果を有しないこと、及び第五〇条第一項の同意を得 ることが困難な者を対象にすることが予測される場合」とは、例えば、同意の能力を欠く者(小児等)を対象にした医薬品に係る治験において、これらの者を被 験者として薬物動態試験を行う必要がある場合が考えられること。
ウ 同項第二号の「当該治験が予測される被験者に対する不利益が必要な最小限度のものであること」とは、被験者に対する予見しうる危険性が低いこと、被験者への肉体的又は精神的な悪影響が、それらを避けるための努力が行われた上で、十分に低いことをいうこと。
エ 第三項の「当該治験が第五〇条第一項及び第二項の同意を得ることが困難と予測される者を対象にし ている場合」とは、次のT)からV)に掲げる点から、被験者又はその代諾者となるべき者から事前に同意を得ることが困難である緊急状況下における救命的な 治験(第五五条参照)であること。
T) 被験者の状態から被験者の同意を得ることができないこと。
U) 被験者の代諾者による同意が可能となる以前に、救急的に治験が開始される必要があること。
V) 当該治験の被験者となりうる者をあらかじめ特定することが困難であること。
また、この場合にあっても、治験責任医師等は速やかに被験者又は代諾者となるべき者に対して当該治 験に関する説明を行い、当該治験への参加について同意を得ること(第五五条第二項参照)及び被験者の身元が明らかでない者は治験の対象から除かれることに ついて、第七条第一項第七号の「治験の方法」及び第八号の「被験者の選定に関する事項」として治験実施計画書に記載すべきであること。なお、治験責任医師 はこの経過と結果を治験審査委員会に報告することについても記載されていること。
オ 同項第四号の「効果安全性評価委員会」は、治験の進行等を適切な間隔で評価し、治験の継続の適否等について治験依頼者に提言するために設置されるものであり、独立データモニタリング委員会とも呼ばれること。
カ なお、治験実施計画書には、作成及び改訂の日付を記載すること。
(六) 第八条関係
第一項第二号の「品質、毒性、薬理作用その他の被験薬に関する事項」とは、被験薬の物理的、化学的及び製剤学的性質、製剤組成、薬理、毒性、薬物動態、薬物代謝に関連する非臨床試験の成績を指すこと。
(七) 第九条関係
被験者の同意を得るに際しての説明文書は、治験の依頼をしようとする者の依頼を受け、その協力を得て、治験責任医師が作成すること。治験の依頼をしようとする者は、必要な資料、情報を提供すること。
(八) 第一二条関係
受託者は、当該受託業務を本省令に従って行わなければならないこと。
(九) 第一三条関係
ア 第九号の「治験薬の管理に関する事項」とは、実施医療機関の長の指名した治験薬管理者が、第一六条第六項の規定により提供された手順書に従って治験薬を適切に管理する旨を含むものであること。
イ 第一一号の趣旨は、本省令中に規定する第二〇条第二項、第二四条第二項、第二四条第三項、第三二条第三項、第四〇条第三項、第四〇条第四項及び第四八条第二項に規定する通知が、適切な時期に適切な方法で行われなければならない旨であること。
ウ 第一二号「被験者の秘密の保全に関する事項」とは、法第八〇条の二第一〇項の規定により、治験依 頼者又はその役員若しくは職員が、モニタリング、監査の際に得た被験者の秘密を漏らしてはならない旨、及び、これらの地位にあった者についても同様である 旨を含むものであること。
エ 第一五号は、実施医療機関がモニター又は監査担当者に対して第四一条第二項各号に掲げる記録を直接閲覧させる旨であること。
オ 本条の規定により契約を締結した受託者は、法第一四条第四項後段及び法第八〇条の二第七項の規定によるGCP調査等の対象となること。
第三章 治験の管理に関する基準
(一〇) 第一六条関係
ア 第五項第一号の記録には、別途通知する治験薬の製造管理及び品質管理基準並びに治験薬の製造施設の構造設備基準(以下「治験薬GMP」という。)に定められた記録を含むこと。
イ 第六項の「治験薬の管理に関する手順書」には、治験薬の受領、取扱い、保管、処方、未使用治験薬の被験者からの返却、未使用被験薬の治験依頼者への返却及びその他の処分が適切で確実に行われるよう、治験薬の管理に関わる者が従うべき事項を規定しなければならないこと。
(一一) 第一七条関係
ア 第一項の「治験薬の品質の確保のために必要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の方法が採られている製造所」とは、治験薬GMPに定められた内容に適合するものであること。
イ 第二項の「やむを得ない事由」とは、例えば、当該治験の内容上、治験薬を実施医療機関に緊急に交付する必要があり、かつ、その手段として運送業者等の第三者を用いざるを得ないことが挙げられること。
(一二) 第一八条関係
ア 第一項の治験調整医師に委嘱される業務は、例えば、治験実施計画書の内容の細目についての多施設間の調整や治験中に生じた治験実施計画書の解釈上の疑義の調整等、多施設共同治験における実施医療機関間の調整に係る業務であること。
イ 治験調整医師は、当該治験の分野において十分な経験を有し、多施設間の調整を適切に行いうる者であること。治験責任医師の中から選定されることが考えられるが、必ずしも治験責任医師に限らないこと。
(一三) 第一九条関係
効果安全性評価委員会は、治験の継続の適否又は治験実施計画書の変更について審議するための委員会 であり、治験の進行、安全性データ及び重要な有効性エンドポイントを適切な間隔で評価するものであること。また、治験責任医師等及び治験調整医師は効果安 全性評価委員会の委員になることはできないこと。
(一四) 第二〇条関係
ア 第二項の「法第八〇条の二第六項に規定する事項」とは、規則第六六条の七に規定する事項であること。
イ 第三項の規定により治験実施計画書の改訂を行う場合には、U一(五)アに定める手続きを準用すること。
(一五) 第二一条関係
ア モニターは、モニタリングの実施に必要な科学的及び臨床的知識を有する者であり、その要件は第一項の「モニタリングに関する手順書」に記載されていなければならないこと。
イ モニターは、実施医療機関を訪問し、原資料を直接閲覧すること等により治験が適切に実施されていること及びデータの信頼性が十分に保たれていることを確認し、その都度モニタリング報告書を治験依頼者に提出することが求められること。
ウ 第二項の「他の方法により十分にモニタリングを実施することができる場合」とは、例えば、治験の 方法(評価項目等を含む)が簡単であるが、参加実施医療機関の数及び地域的分布が大規模であるような治験において、治験責任医師等又は治験協力者等の会合 及びそれらの人々に対する訓練や詳細な手順書の提供、統計学的にコントロールされた方法でのデータの抽出と検証、治験責任医師等との電話、ファックス等に よる連絡等の手段を併用することにより、治験の実施状況を調査し把握することが可能かつ適当である例外的な場合であること。
(一六) 第二三条関係
ア 監査担当者の要件は、第一項の「業務に関する手順書」中に記載されていなければならないこと。
イ 監査担当者も必要に応じて実施医療機関を訪問し、原資料を直接閲覧することにより治験が適切に実施されていること及びデータの信頼性が十分に保たれていることを確認することが求められること。
ウ 監査の方法及び頻度は、治験の内容(治験のデザイン、実施期間等)を考慮して手順書中に適切に設定すること。
(一七) 第二五条関係
ア 総括報告書は、「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成八年五月一日薬審第三三五号)に従って作成すること。
イ 総括報告書には、第二三条第三項に規定する当該治験に係る監査証明書を添付して保存するものとすること。
(一八) 第二六条関係
ア 治験依頼者は、本条の規定により第一項各号に掲げる治験に関する記録を保存するほか、被験薬に係る医薬品が承認を受けた場合には、当該記録を規則第二六条の二の三の規定に従って保存しなければならないこと。
イ 本条の「記録」には、磁気媒体等に記録されたデータを含むこと。データを適切に保存するためには、セキュリティシステムの保持、データのバックアップの実施等が必要であること。
ウ 治験依頼者は、実施医療機関及び当該治験に係る審査を行った治験審査委員会において保存すべき記録について、その保存の必要がなくなった場合には、その旨を実施医療機関の長及び治験審査委員会の設置者に通知しなければならないこと。
第四章 治験を行う基準
(一九) 第二七条関係
「実施医療機関ごとに一の治験審査委員会を設置しなければならない」とは、各実施医療機関において、治験の開始から終了に至るまで継続的に治験に関する調査審議を行う治験審査委員会を設置するという趣旨であること。
(二〇) 第二八条関係
ア 治験審査委員会の委員は、実施医療機関の長又は第二七条第一号から第四号までの治験審査委員会の設置者が選任すること。
イ 実施医療機関の長は、自らが設置する治験審査委員会の委員にはなることができないこと。
ウ 第一項第二号において、委員の数は、少なくとも五名と規定しているが、委員の数がこれよりも多い場合には、同項第三号又は第四号の委員の数を増やす等により、委員構成を適正な割合に保つことが必要であると考えられること。
エ 第一項第四号の「実施医療機関と利害関係を有しない者」とは、例えば、実施医療機関が大学の医学部の附属病院である場合には、他学部(法学部等)の教員はそれに該当すると考えられること。
オ 第二項第二号の「会議の成立要件」には、第一項第三号及び第四号の委員の出席の扱いを明確にしておく必要があること。被験者の人権に係る事項を調査審議する治験審査委員会の責務に鑑み、これらの委員の出席は、原則として会議の成立に欠かせないものであること。
カ 第二項第三号の「会議の運営に関する事項」には、既に承認された進行中の治験に係る軽微な変更について迅速審査を行う場合の条件等の事項が含まれていること。
キ 第二項第五号の「会議の記録」では、審議の結果(承認、不承認等)だけでなく、審議及び採決に参加した委員名簿及び議事要旨が記載されていなければならないこと。
ク 第三項の「治験審査委員会の事務を行う者」は、第三八条の「治験に係る業務に関する事務を行う者」が兼ねることができること。
(二一) 第二九条関係
第一項第一号の「その他の治験依頼者と密接な関係を有する者」とは、例えば、治験依頼者の親会社又は子会社の役員又は職員等がこれに該当すること。
(二二) 第三〇条関係
実施医療機関の長は、治験を行うことの適否について治験審査委員会の意見を聴く際は、第三二条各号に掲げられた文書を治験審査委員会に提出するものであること。
(二三) 第三二条関係
ア 第一項第四号の「治験責任医師等となるべき者の履歴書」には、当該治験責任医師等の学歴とともに、治験総括医師、治験担当医師その他医学的な専門家として治験に参加した経歴等や学会の認定医等の情報も含んだものであることが望ましいこと。
イ 第一項の審査並びに第二項の調査及び審査の結果としての治験審査委員会の意見は、次のT)からW)のいずれに該当するかを示すこと等によりその結論が明確にされていること。
T) 承認する
U) 修正の上で承認する
V) 却下する
W) 既に承認した事項を取り消す(治験の中止又は中断を含む)
ウ 第七条第二項に規定する治験を承認する場合には、治験審査委員会の意見を記した文書中に、同意を得ることが困難な者を治験の対象にすることを承認する旨が明記されていなければならないこと。
エ 第七条第三項に規定する治験を承認する場合には、治験審査委員会の意見を記した文書中に、被験者及び代諾者の同意なしに治験に加わった者の人権、安全及び福祉を保護する方法が明記されていなければならないこと。
(二四) 第三五条関係
第四号の「治験責任医師等、薬剤師、看護婦その他治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員」と は、治験に直接関与する治験責任医師等及び治験協力者のみを限定的に指すのではないこと。必要な職員が十分に確保されているか否かは、実施医療機関全体と して治験を適正かつ円滑に実施することができるかどうかを、治験の内容等に応じて判断すべきものであること。
(二五) 第三六条関係
ア 第一項の「治験に係る業務の手順書」とは、実施医療機関ごとに定められるべきものであること。なお、この手順書は個々の治験ごとに作成する必要はなく、治験に係る業務が恒常的に適正に実施されるよう標準的な手順を定めたものであること。
イ 第二項の「必要な措置」には、実施医療機関において治験分担医師及び治験協力者を指名し、当該リストを治験責任医師及び治験依頼者に提出すること、実施医療機関において適切に情報伝達を行わせること等が挙げられること。
(二六) 第三八条関係
「治験に係る業務に関する事務」とは、治験審査委員会の委員の指名に関する業務、治験の契約の手続きに関する業務、治験に必要な手続きを作成すること等があること。
(二七) 第三九条関係
実施医療機関の長は、実施医療機関において治験薬を適正に管理させるために、治験薬管理者を選任しなければならないこと。治験薬管理者は、原則として薬剤師とすること。
(二八) 第四一条関係
第一項の「記録保存責任者」は、実施医療機関において保存すべき資料ごとに置く必要があること。
(二九) 第四三条関係
治験責任医師は、第一項の治験責任医師によって作成された「分担する業務の一覧表」を作成した場合には、実施医療機関の長へ当該一覧表を提出し、その内容について実施医療機関の長の了承を得なければならないこと。
(三〇) 第四四条関係
第三項の「治験に参加しないことにより不当な不利益を受けるおそれがある者」とは、例えば医・歯学 生、薬学生、看護学生、病院及び検査機関の職員、製薬企業従業員並びに被拘禁者等のように参加に伴う利益あるいは参加拒否による不利益を予想することによ り、治験への自発的参加の意思が不当に影響を受ける可能性がある者をいうこと。
(三一) 第四五条関係
第二項の趣旨は、被験者が既に受けている治療において投与されている薬物等との相互作用等による被験者の健康被害を防ぐためのものであること。
(三二) 第四七条関係
治験責任医師は、本条の規定に従って作成された症例報告書(治験分担医師が作成したものを含む)を治験依頼者に提出すること。
(三三) 第四八条関係
ア 第一項の「治験実施状況の概要」は、第三一条に規定する治験を継続して行うことの適否の審査のために用いられる資料であること。
イ 第二項は、「その他の重篤な有害事象の発生を認めたとき」は、治験薬との因果関係の有無に関わら ずすべての重篤な有害事象を実施医療機関の長に報告するという趣旨であること。この際、治験責任医師は、報告する重篤な有害事象における治験薬との因果関 係を特定しなければならないこと。
(三四) 第五〇条関係
ア 第一項の「文書により適切な説明を行い」とは、第五一条第一項各号に掲げる事項を記載した説明文書を用いて、被験者となるべき者(第二項に規定する場合は代諾者となるべき者)の理解を得るよう十分に説明を行うことであること。
イ 第二項の規定により代諾者となるべき者の同意を得ることにより被験者を治験に参加させる場合にあっても、被験者の理解力に応じて説明を行い、可能であれば被験者からも文書による同意を得ること。
ウ 治験責任医師は、第四項の規定により同意を得ることが困難な者を被験者とする場合には、あらかじ め、第七条第二項の規定に従ってその旨が明記された治験実施計画書が審査された上で治験が承認され、当該承認文書上に同意を得ることが困難な者を被験者と することを認める旨が記載されていることを確認しなければならないこと。
(三五) 第五一条関係
ア 第一項第四号の「治験の方法」には、次の事項の説明が含まれていなければならないこと。
T) 治験の方法の試験的側面
U) 被験者の選択基準
V) 無作為割付が行われる場合には、被験者が各処置に割り付けられる確率
イ 第一項第五号の「予測される治験薬の効果及び予測される被験者に対する不利益」には、被験者にとって予期される利益がない場合にはその旨を記載しなければならないこと。
ウ 第一項第六号の「他の治療方法に関する事項」とは、被験者が患者である場合に、当該患者に対する他の治療方法の有無及びその治療方法に関して予測される重要な利益及び危険性であること。
エ 被験者への説明文書には、第一項第一〇号の「モニター、監査担当者及び治験審査委員会」に加えて、規制当局が原資料を閲覧できる旨を記載すること。また、同意文書に被験者又はその代諾者が記名なつ印し、又は署名することにより閲覧を認めたことになる旨を記載すること。
オ 第一項第一一号の「被験者に係る秘密が保全される旨」とは、治験の結果が公表される場合でも被験者の秘密が保全される旨であること。
カ 第一項第一五号の「当該治験に係る必要な事項」とは、治験に参加する予定の被験者数、治験に継続 して参加するかどうかについて被験者の意思に影響を与えるものと認める情報を入手した場合には直ちに被験者又は代諾者に当該情報が伝えられること、治験へ の参加を中止させる場合の条件又は理由、被験者が費用負担をする必要がある場合にはその内容、被験者に金銭等が支払われる場合にはその内容及び被験者が守 るべき事項が挙げられること。
キ 説明文書と第五二条の同意文書は、一体化した文書又は一式の文書とすることが望ましいこと。
(三六) 第五二条関係
ア 治験協力者が補足的な説明を行った場合には、第一項の規定に加えて、当該治験協力者も日付を記載して、同意文書に記名なつ印し、又は署名すること。
イ 第三項の「説明文書を読むことができない」被験者とは、例えば、眼疾患を有することにより説明文書を読むことはできないが、口頭による説明等ではその内容を理解することができる被験者を指すこと。
(三七) 第五五条関係
ア 治験責任医師等は、第七条第三項に規定する治験においては、あらかじめ、治験審査委員会の承認文書に被験者及び代諾者の同意なしに治験に加わった者の人権、安全及び福祉を保護する方法が明記されていることを確認しなければならないこと。
イ 第二項の趣旨から、被験者の身元が明らかでない者は治験の対象としてはならないこと。また、同項の規定により行った経過と結果について治験責任医師は治験審査委員会に報告すること。
三 再審査・再評価資料の基準(第五章)
市販後臨床試験の特性にかんがみ、治験薬概要書の作成に関する規定、市販後臨床試験薬の取扱いに関 する規定など一部の規定を準用せず、また、必要な読み替えを行ったものであること。なお、市販後臨床試験において市販薬を用いて良い場合は、試験の信頼性 に影響を与えない場合に限ることとし、それ以外は盲検化した医薬品を用いること。
四 治験の依頼等の基準(第六章)
治験の依頼等の基準は、治験の依頼をしようとする者、治験の依頼を受けた者及び治験の依頼をした者 の行為の規範であり、承認審査資料等の基準とは適用すべき範囲が異なっていることから、必要な読み替えを行うものであること。また、治験の依頼をしようと する者及び治験の依頼をした者については罰則の適用があること。
五 その他
(一) 本省令の施行前に、医薬品の製造(輸入)承認申請がなされている場合にあっては、原則として、旧GCPに従って収集され、作成された資料を審査資料として受け入れるものであること。
(二) 製造業者等が適正使用情報を収集するため自主的に実施する市販後臨床試験にあっても、再審査・再評価資料の基準に従って実施することが望ましいこと。